2.スルーホール修理
5.3 めっきスルーホールのリペア(内層接続がある場合)
概要
本手順は、内層接続のある、損傷したスルーホールのリペアについて記述する。内層の再接続は、アイレットバレルを露出させた内層にはんだ付することにより確立される。また、接続部は、高強度のエポキシにて封止される。スルーホールのバレル(内壁)に損傷がない場合は、5.2ダブルウォール工法も適用可能である。
スキルレベル
エキスパート
適合性レベル
中
- ※ 各手順の実施に必要な推奨スキルレベルを、指標として記載している。エキスパート > 上級 > 中級
- ※ 適合性レベルは、各手順の処置が問題なく完成した際に、その製品がもとの製品要件に到達する適合度を示している。
高 > 中 > 低
許容基準の参照文献
工具および材料
- アイレット、アイレットリペアキット
- エポキシ剤
- 手持ち式ドリル
- 超硬ボールミル、超硬エンドミル
- はんだごて、糸はんだ
- 精密ドリルプレス
- 液体フラックス
- ピンゲージ、キャリパー
- マイクロスコープ
- ナイフ、ピンゲージなど
前提条件
この手順は、適切な工具および材料を必要とする複雑なリペア手順である。信頼性の高い結果を得るには、作業者は高水準の専門知識を有している必要がある。代替工法がない場合に限り、本工法を適用すること。
修理手順
下記表は横にスクロールできます。
STEP1 | 対象箇所を清掃する。 |
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STEP2 | アイレットの選定基準に基づいて、アイレットを選定する。ピンゲージおよびキャリパーを使用して、既存のめっきホールの寸法を測定する。 |
STEP3 | プリント回路基板を精密ドリルプレスのベースに固定する(図1) |
STEP4 | 適切なボールミル、エンドミル、またはドリルをドリルプレスのチャックに取り付ける。 |
STEP5 | ミルまたはドリルでホールをあける。加工ホールは、アイレットの外径よりも0.030mm大きいと良い。検査にて金属粒子またはバリが残留していないことを確認する。 |
STEP6 | カウンターボア(座ぐり)ホールをあける組立面を選定する。 |
STEP7 | アイレットの径よりも0.050mm~0.075mm大きいエンドミルを選定する。ミルを精密ドリルプレスに挿入し、内層まで削り、内層信号または内層プレーンを露出させる (図2) |
※注意※ |
|
STEP8 | 対象箇所を清掃する。 |
STEP9 | 少量の液体フラックスを露出した信号またはプレーンに塗布し、予備はんだを施す。 |
STEP10 | 対象箇所を清掃する。 |
STEP11 | ミルで削ったホールの反対側からアイレットをホールに挿入し、そのホールに少量の液体フラックスを塗布。 |
STEP12 | はんだこてからアイレットのバレルに熱を加えることにより、露出した内層信号または内層プレーンにアイレットをはんだ付けする。(図3) |
STEP13 | クリーナーでスプレー洗浄し、フラックスの残渣を除去する。 |
STEP14 | マイクロスコープを使用して、アイレットから内層接続までのはんだフィレットを検査し、必要に応じて電気試験を行う。 |
STEP15 | 必要に応じて、エポキシを混合する。 |
STEP16 | ミルで削ったホールが、基板表面と平坦になるまでエポキシを充填する(図4)。エポキシ充填ではボイドや気泡がないことが望ましい。 |
STEP17 | メーカー推奨事項に従い、エポキシを硬化 |
STEP18 | 適切な取り付け工具を選定し、アイレットプレスに挿入する。(図5) |
STEP19 | プリント回路基板を裏返して、下側の取り付け工具にアイレットフランジを置く。 |
STEP20 | 圧力を均等に加え、アイレットのバレルを形成する。(図6) |
STEP21 | 要求に応じて、部品リードを取り付け、はんだ付け。 |
STEP22 | 対象箇所を清掃する。 |
下記図は横にスクロールできます。
検査上の注意点
- パッド径と内径の寸法が要求通りであるか目視検査する
- 電気的導通の測定
- アイレットとホールの配置の適切性
- はんだ付をする面にエポキシがない。また、はんだの最低要件を妨げていない
- アイレットフランジが最小電気的クリアランスに反していない
- 導体の損傷
- 基板の損傷
アイレットの選定基準
- 【FD:フランジ径】
- 隣接するパッドや導体と干渉しない程度に小さいこと
- 【ID:内径】
- 部品リード径+0.075mm~0.5mm
- 【LUF:フランジ下長さ】
- 基板厚+0.630mm~0.890mm
- 【OD:外径】
- 力を入れずにホールに挿入できる程度